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help リーダーに追加 RSS 大学生時代の思い出です。

<<   作成日時 : 2008/05/11 19:33   >>

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『ういらう売り』


拙者(せっしゃ)親方と申すは、

お立会いの中(うち)に、

ご存知のお方もござりましょうが、

お江戸を発(た)って二十里上方(かみがた)、

相州(そうしゅう)小田原一色町(いっしきまち)をお過ぎなされて、

青物町を登りへおいでなさるれば、

欄干橋(らんかんばし)虎屋(とらや)藤衛門(とうえもん)

ただいまは剃髪(ていはつ)致して、

円斉(えんさい)となのりまする。

元朝(がんちょう)より大晦日(おおつごもり)まで、

お手に入れまする此(こ)の薬は、

むかし陳(ちん)の国の唐人(とうじん)、

外郎(ういろう)という人、

わが朝(ちょう)へ来(きた)り、

帝(みかど)へ参内(さんだい)の折から、

この薬を深く籠(こ)め置
き、

用(もち)ゆる時は一粒(いちりゅう)ずつ、

冠のすき間より取り出(いだ)す。

依(よ)ってその名を帝より、

とうちんこうと賜(たまわ)る。

即(すなわ)ち文字(もんじ)には

「頂き、透(す)く、香(にお)い」と書いて

「とうちんこう」と申す。

只今はこの薬、

殊(こと)の外(ほか)世上(せじょう)に弘まり、

方々(ほうぼう)に似(にせ)看板を出(いだ)し、

イヤ、小田原の、灰俵(はいだわら)の、

さん俵の、炭俵のと色々に申せども、

平仮名をもって「ういろう」と記せしは

親方円斉ばかり。

もしやお立会いの中(うち)に、

熱海(あたみ)か塔(とう)の沢へ

湯治(とうじ)にお出(い)でなさるるか、

又は伊勢(いせ)御参宮(ごさんぐう)の折りからは、

必ず門(かど)違いなされまするな。

お登りならば右の方(かた)、

お下(くだ)りなれば左側、

八方(はっぽう)が八つ棟(やつむね)、

表が三つ棟(みつむね)玉堂(ぎょくどう)造り、

破風(はふ)には菊に

桐(きり)のとうの御紋(ごもん)を

御赦免(ごしゃめん)あって、

系図(けいず)正しき薬でござる。

イヤ最前より家名の自慢(じまん)ばかり申しても、

ご存じない方には、

正身(しょうしん)の胡椒(こしょう)の丸呑(まるのみ)、

白河夜船(しらかわよふね)、

さらば一粒(いちりゅう)食べかけて、

その気味合(きみあい)をお目にかけましょう。

先(ま)ずこの薬をかように

一粒(いちりゅう)舌の上へのせまして、

腹内(ふくない)へ納めますると

イヤどうも云(い)えぬは、

胃、心(しん)、肺、肝(かん)がすこやかになりて、

薫風(くんぷう)咽(のんど)より来(きた)り、

口中(こうちゅう)微涼(びりょう)を

生(しょう)ずるが如(ごと)し。

魚鳥(ぎょちょう)、茸(きのこ)、

麺類(めんるい)の食い合せ、

其(そ)のほか、

万病速効(そっこう)あること神の如(ごと)し。


さて、この薬、第一の奇妙(きみょう)には、

舌のまわることが、銭(ぜに)ゴマがはだしで逃げる。

ひょっと舌がまわり出すと、

矢も盾(たて)もたまらぬじゃ。

そりゃそりゃ、そらそりゃ、

まわってきたわ、まわってくるわ。

アワヤ咽(のんど)、さたらな舌に、

カ牙(げ)サ歯音(しおん)、

ハマのふたつは唇(くちびる)の軽重(けいちょう)、

開合(かいごう)さわやかに、

あかさたなはまやらわ、

おこそとのほもよろを、

一つぺぎへぎにへぎほし、はじかみ、

盆まめ、盆米、盆ごぼう、

摘蓼(つみたで)、摘(つみ)豆、つみ山椒(ざんしょう)、

書写山(しょしゃざん)の社僧正(しゃそうじょう)、

粉米(こごめ)のなまがみ、

粉米のなまがみ、

こん粉米の小生(こなま)がみ、

繻子(しゅす)ひじゅす、

繻子(しゅす)、繻珍(しゅちん)、

親も嘉兵衛(かへえ)、子も嘉兵衛、

親かへい子かへい、子かへい親かへい、

ふる栗の木の古切口。

雨合羽か、番合羽(ばんがっぱ)か、

貴様(きさま)のきゃはんも皮脚絆(かわぎゃはん)、

我等(われら)がきゃはんも皮脚絆、

しっかわ袴(ばかま)のしっぽころびを、

三針(みはり)はりながにちょと縫(ぬ)うて、

ぬうてちょとぶんだせ、

かわら撫子(なでしこ)、野石竹(のせきちく)。

のら如来(にょらい)、のら如来、

三(み)のら如来に六(む)のら如来。

一寸(ちょっと)先のお小仏(こぼとけ)におけつまずきゃるな、

細溝(ほそどぶ)にどじょにょろり。

京のなま鱈(だら)奈良なま学鰹(まながつお)、

ちょと四、五貫目(し、ごかんめ)、

お茶立ちょ、茶立ちょ、

ちゃっと立ちょ茶立ちゃ、

青竹茶筅(ちゃせん)でお茶ちゃっと立ちゃ。

来るわ来るわ何が来る、

高野(こうや)の山のおこけら小僧(こぞう)。

狸(たぬき)百匹、箸(はし)百膳(ひゃくぜん)、

天目(てんもく)百杯、棒八百本。

武具(ぶぐ)、馬具(ばぐ)、ぶぐ、ばぐ、

三(み)ぶぐばぐ、

合せて武具、馬具、六(む)ぶぐばぐ、

菊、栗、きく、くり、三菊栗、

合せて菊、栗、六菊栗、

麦、ごみ、むぎ、ごみ、三むぎごみ、

合せてむぎ、ごみ、六むぎごみ。

あの長押(なげし)の長薙刀(ながなぎなた)は、

誰(た)が長薙刀ぞ。

向うの胡麻(ごま)がらは、

荏(え)のごまがらか、真ごまがらか、

あれこそほんの、真胡麻殻(まごまがら)。

がらぴいがらぴい風車、おきゃがれこぼし、

おきゃがれ小法師(こぼうし)、

ゆんべもこぼして、又こぼした。

たあぷぽぽ、たあぷぽぽちりから、からから、

つったっぽ、たっぽたっぽ一丁だこ、

落ちたら煮て食お、

煮ても焼いても食われぬものは、

五徳(ごとく)、鉄きゅう、

かな熊(くま)童子(どうじ)に、

石熊(いしくま)、石持(いしもち)、

虎熊(とらくま)、虎きす。

中にも、東寺(とうじ)の羅生門(らしょうもん)には、

茨木(いばらぎ)童子(どうじ)が

うで栗五合(ごんごう)つかんでおむしゃる、

かの頼光(らいこう)のひざもと去らず。

鮒、きんかん、椎茸、定めて後段(ごだん)な、

そば切り、そうめん、うどんか、

愚鈍(ぐどん)な小新発知(こしんぼち)。

小棚の、小下の、小桶(おけ)に、

小味噌が、こ有るぞ、小杓子(しゃくし)、

こ持って、こすくって、こよこせ、

おっと合点(がてん)だ、

心得(こころえ)たんぼの

川崎、神奈川、程ヶ谷(ほどがや)、

戸塚は、走って行けば、

やいとを摺(す)りむく、

三里(さんり)ばかりか、

藤沢、平塚、大磯がしや、

小磯(こいそ)の宿(しゅく)を七つ起きして、

早天早々(そうてんそうそう)、

相州(そうしゅう)小田原とうちん香(こう)、

隠れござらぬ、貴賎(きせん)群衆(ぐんじゅ)の

花のお江戸の花ういろう、

あれあの花を見てお心をおやわらぎやという。

産子(うぶこ)、這子(はうこ)に至(いた)るまで、

この外郎(ういろう)の御評判(ごひょうばん)、

御存じないとは申されまいまいつぶり、

角(つの)出せ、棒出せ、ぼうぼうまゆに、

臼(うす)、杵(きね)、すりばち、

ばちばちぐゎらぐゎらと、

羽目(はめ)をはずして

今日(こんにち)お出(い)でのいずれの様に、

上げねばならぬ、売らねばならぬと、

息せい引っぱり、東方世界の薬の元〆(もとじめ)、

薬師如来(やくしにょらい)も照覧(しょうらん)あれと、

ホホ敬(うやま)いて、

ういろうは、いらっしゃりませぬか。


 大学生時代に入っていたサークルで暗記しました。

今は、かなり忘れています。


なんでも、江戸時代の中期に、この歌舞伎の口上は、登場したそうです。

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